第10回知恵蔵の時間 瀧澤英雄さん

知恵蔵の時間 第10回  講話 瀧澤英雄さん

「北御牧の風景の写真」

2019年7月28日  14時~

 於 まる屋  司会 小林恭介  撮影 橘正人

司会 第10回目の知恵蔵の時間を始めたいと思います。よろしくお願いいたします。今日は語り手さんとして、瀧澤英雄さん。下八重原の。タイトルは「北御牧の風景の写真」ということでお話しをして頂きます。以前私は瀧澤さんから少し、お話しも聞いていたんですけれども、本当にやっぱり、ご自身の暮らしているこの地域の自然であるとか、その移り変わりのことを、非常にいつも観察されていて、その中でそれを写真という中に収めていくということをされているんだなと感じています。この知恵蔵の時間というのは別に一般論的な話を聞くのではなくて、やっぱりその人がどういう想いを持ってそこに向き合っていらっしゃるのか、っていうことをぜひ、お話しを伺いたいなというのが主旨なので、そういう所をお話し頂ければと思っています。せっかくなので、お座りの方に自己紹介、簡単にお名前と、せっかく滝澤さんがいらしているので、どんなことを聞きたいか、ぜひちょっと一言ずつお願いしたいなと思います。

小林麻美 まる屋の小林麻美です。聞きたいことですか?突然だったので……これを撮りたいなっていう瞬間というか、風景を見てそう思うのか、どういう時に……。

瀧澤英雄 えーとね、だいたい、狙って撮った写真はこれだけだね。白鳥が来たからっていって、友人に言われて行って、狙って撮ったの。あとはもうへえ、あ、これも狙ったんだな。太陽柱っていうんだけど。後はみんな散歩してて。

司会 そうですか。ではまた後でより詳しいお話しをお願いします。

TY TYといいます。私はこの前、デストロイヤーという、ものすごく美味しくて変ったジャガイモを頂きました。生産者としても素晴らしい方だというのは分かってますので、その忙しい毎日の中で、どうやったらこういう写真が撮れるのかが、ちょっと伺いたいなと思います。

瀧澤英雄 仕事の合間です。(笑い)いや、冗談じゃなくて、ちょっと顔を上げたら、おい、なんか出て来たぞ、て。カメラはいつも車の中へ入れといて。昔みたいにフィルムのカメラじゃそうはいかないけど、デジカメって便利だよね。

司会 なるほどね。分かりました。ありがとうございました。

OS 上八重原のOSです。たまたま声を掛けてもらったもんで、あの、来月の下見に。(笑い)知恵蔵は今かなり、その筋の中では有名で(笑い)、ラジオかなんかでやってた地域のコミュニティーが失われているっていう時代に、まさしくこれはコミュニティーだと思ってね。これに一人でも多くの人が来れば、今まで聞くことの出来なかった情報だとか、人となりが分かってくるもんで、地域づくりの基本だろうな、って思ってた。年代を超えてもっと広がって行くとね、多分ここが、発信出来るような基地になればいいなっていう、印象は持ってます。だから隅っこの方で少しね、お手伝いが出来れば良いなと思ってます。あと、写真のことは、俺も碌な写真は撮らなかったけど、高校の頃から写真クラブと美術クラブと、絵も描かなきゃ写真も撮らねえ、っていう(笑い)ただね、面しれえのは、八重原は圃場整備しちゃったでしょ。その圃場整備する前の風景が、とても良かったんだけど、記憶にはあるけど、今はないだよな、その風景が。なんで記録に残さなかったかな、って今、うんと悔やむだ。だけど考えてみりゃ、今のこの景色が、未来になったら、今が一番古いだよな。だから、今をとっておくことが、とても大事だだよ。だから今をとっておけるのは、言葉でもなんでもない、写真なんだよ。これを撮っておくと、あれを撮った時はああだった、こうだった、って。あん時の家はこうだったって全部出て来て、深い思い出話がいっぱい出てくるだよな。記録としては最高だよな。だから、素晴らしい写真をぜひ、いっぱい撮ってくれよな。(笑い)

司会 ありがとうございました。

TM TMと申します。あと一週間くらいで八反田の辺りに越して参りますので、よろしくお願いいたします。仲間に入れて頂きたく、お願いいたします。瀧澤さんとは写真プロジェクトでご一緒しまして、写真プロジェクトでは大事な、笑顔の写真をたくさん撮って頂きました。

瀧澤秀雄 十五年前か。

TM この瀧澤さんはご覧の通り、お人柄が素晴らしくて、あの、子供さんが猫を抱いている時があったんですよ。その猫もね、子供さんもね、笑ってる、っていう写真が撮れてね、本当にどう見たって、猫も笑ってるんですよ。(笑い) あの時は合併になった時の記録の写真ではあるんですけれども、あれが時間が経てば経つほど、あん時はああだったね、まだ若かったね、こんなに小ちゃかったね、とか、そういう記録の写真で。時間が経てば経つほど意味が出て来ているなあ、って思いました。だから、OSさんがお話しされた通り、その時の写真というのは、あの時はああだったね、という記憶に結びついてくる記録だなあと思います。その時のメインのカメラマン、瀧澤英雄さんです。

瀧澤英雄 今、その写真がさ、葬式の写真にだいぶ使われてるんだよ。(笑い)そうなんだよ。なんにも写真がなくて、そうすると、笑顔じゃないですか。

OS いいじゃないか、って。

瀧澤英雄 そうだって。

OS とてもいい。

瀧澤英雄 そんなとこに使えるとは思わなかった。(笑い)結構、よくあるみたい。

TY 羽毛山のTYといいます。今日来た主旨は、私もある趣味を今年で40年になりますが、それの写真集を発行しようと企画してまして、瀧澤の写真を見せてもらって、掛け軸の代わりというか、バックに使えるような写真を自分も撮りたいなと思って、来ました。

瀧澤英雄、同級生です。

司会 後で、その40年やられている趣味のお話しをしていただけますか。

瀧澤英雄 あれは、何というのだっけ。

TY 水石。

瀧澤英雄 石の芸術。

一同  ほー!

司会 彫ってくんですか?

TY 石を拾って来て、その、芸術的に見せる。そう、置き石。市の文化会館の展示室で、あれは70坪ほどあるんだそうですね。そこで約100石くらい出したの、展示して。3回やって千人弱くらい来ました。最後に人生も終わりに近づいているから、写真集を作ろう、って思って、それにこういうね、見せてもらってその中に入れようかなと。

司会 またゆっくり、その話をお願いします。今日は瀧澤さんの日なので。さっそく瀧澤さんのお話しを聞きたいんですが、写真のお話しを聞くんですが、瀧澤さんは下八重原でお生まれになられて、そのへんの情報を少し頂けるとありがたいんですが。家業の話とか。

瀧澤英雄 家業は、まず、私は会社員だったんです。高校を卒業して、あそこにトウトク、ってあるじゃないですか。生まれたのはここ、昭和18年、この間の新聞に77なんて出ちゃった。(笑い)76だよな。

TM 私は昭和19年です。

瀧澤英雄 早生まれと遅生まれの差だな。

司会 終戦2年前くらいですね。

瀧澤英雄 高校は地元の、今は何というだい、東御清翔、昔の東部高校。行くとこねえ子が行くとこ。そこを卒業して、トウトク、ってとこへ入って。そこで友達が、山の好きな人がいたんです。先輩だね、その時、一番最初に連れて行ってくれたのが、はんのきか、雪渓のあるとこ。あれで初めて雪渓に登って、それで魅せられちゃったんだね。その時にカメラを持ってってて、でも、その時はまだ白黒ですよ。フィルムの白黒。それで田中に、今はもう無くなっちゃったけどヤマトさん、っていう写真屋があって、そこからカメラを借りて。

OS 高価だからな。

瀧澤秀雄 高価だから。買えねえもんで。それでほ、さっき先生が言った、蛇腹っていうのね、あれ山へ持ってくのには本当、具合がいいんですよ、ぺったんこになっちゃうから。だから白黒の写真しかないね。

司会 それがおいくつくらいの時なんですか。

瀧澤英雄 二十歳前後かな。その頃から友達4、5人いて、で、山に登り始めたんですよ。

だからアルプスなんか、5、6回行ってますよ。一番苦労だったのは前穂高から登った、あれはもう、死ぬかと思った。あれ後で聞いたら、下る所だった。(笑い)

司会 あれ、逆から登ったらね。

瀧澤英雄 そう、あんな所から登る馬鹿がどこにあるか、ってね。(笑い)

司会 それはやっぱり瀧澤さんは、写真を撮りたい、っていう想いで登られたんですか。

瀧澤英雄 それは写真を撮りたい、っていうよりは山に登りたい、って方が強かった。それでついでに写真を撮ってた。

司会 それでカメラを借りて持ってった。

瀧澤英雄 そう、借りて。

司会 なるほど。行けば行くほど、撮れば撮るほど、面白さに嵌ってった、って感じですかね。

瀧澤英雄 その頃は写真はまだ、ついでだったな。何しろ山に登るのが好きで。昔だから20キロ30キロあっても、横に白い、黄色い、な、それで登ってっただよ。今は山に生ビールがあるじゃないですか。その当時は山にねえから、下から持ってって。だから、ビールなんかも凍らせてさ、で、新聞紙に包ましてそれで8時間経つとちょうど。だから酒なんて飲まなかっただよ。だから山に行って、缶ビールを飲むのが好きだった、ってことかな。

司会 山は景色を見ながら飲むのが最高ですよね。じゃあ、このトウトクさんの方へはずっとお勤めされて?

瀧澤英雄 いやいや、それで、なに間違えたか知らないが、菓子屋へ行った。うさぎやさん、って。あそこに家のおじさんが行ってて、専務かなんかになってて。で、小諸にもあったんですよ。当時はね。そこでお前に任せるから、って。7、8年やったかな。

司会 その間もやっぱり写真を撮ってたんですか。

瀧澤英雄 それはあんまり撮らなかったな。本当に撮るようになったのは橘先生のお陰だよ。

司会 農業もやられてた訳ですよね。

瀧澤英雄 農業をやり始めたのは40近くだね。

司会 もともとご実家が農業ですか。

瀧澤英雄 ずっと農業はやってた。

司会 じゃあ、ずっとお勤めしながらも農業はやられてたと

瀧澤英雄 そうそう、でも、ジャガイモを作るようになったのは、60から、定年になってからだ。

司会 それじゃあ、60歳で定年を迎えられて農業を。

瀧澤英雄 それでも趣味みたいなもんだけどね。

司会 それでも写真は。

瀧澤英雄 ええ、ずっとやってました。だから百姓やってるとね、そこへ行って、あ、空が赤くなった、っていったら、撮ればいいだものね。だからアマチュアカメラマンさんみたいに、今回どっかに撮りに行くぞ、とか、そういう写真は私の場合は一個もないんですよ。

司会 それはやっぱり農業をしていて、自身の畑の傍にという。

瀧澤英雄 そうそう、それで自分の好きな構図があれば撮るというような。これなんか、みんなそうだものね。あれだけは狙って撮ったけどね。後は用事あって来て、これもたまたま朝日かなんか撮ろうかなと思ってたんだよね。そしたら普通あまり出ないんだけど、太陽柱って。

司会 そうとう短い時間しか見えないですか?

瀧澤英雄 分かんない、分かんない。でもあっという間に消えちゃうよ。それと、なんていうだい、雲というか、空に湿気がなきゃ駄目らしいね。乱反射するらしいね。だから、いつも出る訳じゃねえな。めったに出ない。いつも撮れる写真はこれだよ。朝日出れば撮れる。

司会 氷が張っていて。

小林麻美 これはどこですか。

瀧澤英雄 ここだよ、ここ。ここのね、向こうから撮ったの。向こうから撮ると朝日がちょうど上がるんですよ。

司会 なるほどね。

瀧澤英雄 あと、これはそこ。これは今年です。桜はね。その向こうも桜であっちの方から撮ったの。逆光で撮ってる。あと、それはいつだか忘れちゃった。冬の、まだあれやってる、これ最近やったとこだよね。描いたのね。だからよっぽど前だったの。(結いの高覧道の欄干が手入れされている)

小林麻美 今、その色ですからね。さらに緑に塗ったか。

司会 一番向こうは。

瀧澤英雄 一番向こうはね、そこの氷柱。野外ステージじゃなくて、絵が飾ってあるじゃないですか。

司会 ああ、あそこね。

瀧澤英雄 あそこから氷柱が落ちて、だから、こっちから撮った写真だね。そう、それは夕陽。

司会 やっぱり60年農業をやりながら、写真をどんどん撮っているのは、どういうところに面白さというか、惹かれていったんですか。

瀧澤英雄 なんでだろうな。自分の好みにあった、ただの綺麗なのとはちょっと違う要泣きがするけれども。どういうことだろうな。

司会 ふとカメラを持ちたくなることがあるんですよね。これを撮りたいとかね。

瀧澤英雄 いつも置いてあるから。風景がおーっと自分の感覚に合えば。だから、今日はこの写真を撮ろうなんていう写真は一枚もないかも知れないな。

司会 なるほど。やっぱりその日の天候とか、陽の移り変わりとか、その日のふと眼に入ったものが。

瀧澤英雄 そうだね。

司会 そういうものを撮っていってると。

瀧澤英雄 だから、夕陽とかが多いよな。もっとも昼間なんかね、被写体ないよね。

TY この前サロンに飾ってあった、資料館の、桜と雪が一緒の写真は?

瀧澤英雄 持って来てるんじゃないかな。その、でっかいの。

司会 見せて頂きましょうか。

瀧澤英雄 あれ、何年頃だ。10年くらい前になるか。5、6年前じゃないよな、もっと前だよね。

司会 ああ、いい写真だ、これは。

TY これは狙っていったんでしょう。

瀧澤英雄 これは狙った。(笑い)うん、雪降ったから。

OS この時期に、雪降るかなあ。

瀧澤英雄 だから狙った。これは大判写真展ていうのがあったんだけど、その会員になってるんだけど、そこで入選したやつだな。

OS これは見事だわ。

瀧澤英雄 もう二度と撮れないと思う。

TY だって、こんな状況はないですものね。

瀧澤英雄 ないよ、ないよ。桜咲いてて雪降るなんてこと、ないよな。

司会 これは4月頃ですか?

OS 空の青がいいわ。青が桜と映えてね。コントラストがすごいわ。運がいいよね。

TY 誇りですよね。村の。それを残せたというのがすごいですよね。

瀧澤英雄 これはフィルム、色がたぶん違うと思う。

司会 やっぱり違いますか。フィルムと。

瀧澤英雄 違うよね、やっぱり。ねえ、先生。フィルムとは。

TM フィルムとデジタルでは、なんか、質感が違う。艶っぽいというのかね。フィルムの方が。

OS やっぱりプロがな、デジタルは最近のものだけどな。フィルムの方がソフトでいいとかさ。

瀧澤英雄 デジタルカメラなんて、どうにでも加工出来るからな。だから俺は言ってるんだよ。あれは写真じゃない、って。だって、ここにもう一本、木を入れたいと思ったら入っちゃうんだもんね。アートだ。負け惜しみだよ。(笑い)

司会 だけど、現像してこないとね、分からないですよね。

瀧澤英雄 今デジタルなんか、一瞬のうちに百枚くらい撮れちゃうもんね。こないだ新聞に載った、信毎さん来た時なんて、パシャパシャッてそんなに撮って、どうやって選ぶだい、って。

TY プロになると、これだっていう根拠があるんですかね。

瀧澤英雄 分かんない。百枚撮ってそこから選ぶって。

司会 今でもかなりこだわって。

瀧澤英雄 たださ、今って現像屋がないんだよ。やれる所がない。だから大阪とかさ、あっちの方があるらしいよ。

司会 ちなみにこの写真はどちらで現像されたんですか。

瀧澤英雄 これは大阪だ。大阪だけど、違う。東京のなんだったっけな、

OS そこら辺のカメラ屋ではやらないんだ。

瀧澤英雄 やらないよ。みんな送るだよ。

OS しょうがねえな。

瀧澤英雄 上田で一軒だけ、やってくれるところがあるみたいだけど。

司会 そうですか。

小林麻美 これはどこで入賞っていうんですか、賞を貰ったんですか。

瀧澤英雄 大判写真展、っていう。

小林麻美 東京ですか?

瀧澤英雄 ううん、大阪。

司会 これ、みんな撮られたものを出品もされてて、すごいですよね。

瀧澤英雄 (持って来て置いてある写真を)それじゃあ、見てもらうか。

TY だって写真集にしっかり載ってますよ。

小林麻美 この間も東京の写真展に出されて、送ったなんて。

瀧澤英雄 これは。

小林麻美 (題名を読む)仲良く散歩。

瀧澤英雄 家の息子夫婦だよ。と、犬。犬はもういない。天国に行っちゃった。

司会 これは向こうからの光があるんですか。

瀧澤英雄 そうそう、夕陽だね。

TY 永久保存版、って感じですね。

司会 こうやって見ていると、そこにある日常が。

瀧澤英雄 みんなそうだよ、私の撮るのは。

司会 そこにある風景とかを収めてってる、っていう感じなんですけどね。

小林麻美 これは田圃ですか。

瀧澤英雄 はい、ああ、田植えする前。

小林麻美 へー、そうですか。息子さんの頭の所に太陽がね。

瀧澤英雄 それはやっぱり何枚も撮ってるから。(笑い)

司会 これはフィルムですか?

瀧澤英雄 これはフィルム。

TY これもどこかに出されました?

瀧澤英雄 これも、総合写真展に。これは優秀賞かなんかに。

司会 ご自身でその技術ってものを学んだんですか?撮りながらとか?

瀧澤英雄 あるある、あのカメラ雑誌とか。ああいう所でさ、ここは、こういうふうに撮ればもっと良くなるとかって、あれ、あるじゃないですか。そういうの見てさ。参考にはしてるけれども。

TY やっぱりそれは身をもって、分かることばっかりとか。言われるとやっぱりそうかな、と思ったりするんですか。

瀧澤英雄 そうかな、って思う、思う。だから今のデジカメなんか、でっかい画面にバシャッと撮っておいてさ、あと、いいとこだけカットして。どんな画面にだってなっちゃうよね。そこ行くとフィルムは駄目だもんね。

TY その一瞬が勝負ですものね。

司会 やっぱり、シャッターを押す時にネガとデジタルでは違いますか?

瀧澤英雄 全然、違う。

司会 やっぱり違いますか。

瀧澤英雄 デジタルなんて、全然デタラメだよ。

司会 とりあえず押しとけみたいな。

瀧澤英雄 そうそう、一応構図はやるけども、フィルムとは全然違いますね。

TY なんか、フィルムの方が魂がこもるというか、なんかあるんですかね。

瀧澤英雄 本人はそう思うだけどね。

司会 その一押しの気持ちの入れ方が違うんですかね。

TY やっぱり愛情が溢れているように感じます。

小林麻美 そう、愛情がね。色といいね、お父さんの視点ですよね。

TY なんか、わんちゃんも。

瀧澤英雄 話しかけてる感じだったんだよね。

司会 そうですね。本当に家族にとっても大切な写真になりますね。これによってね。もう犬もいらっしゃらないんですものね。

瀧澤英雄 もういねえからね。お墓が家の前にあるけど。

司会 でも瀧澤さんみたいに、普段のこういう写真を撮られているっていうことが、そこの背景、裏にあるものが、暮らしだとかが本当に残って来ますよね。

OS 瀧澤さんはもうプロだからだけど、俺、見ててな、これ一枚残すのに何百枚撮ったんだろうって思うな。

瀧澤英雄 フィルムは撮れねえんだよ。

OS 俺も昔、写真が好きだったから、白黒で、カラーは持ってないから、一日行って何百枚撮っただ。そんなかで気に入ったのなんか、幾枚もないだ。

瀧澤英雄 よくそんなに撮れただな。(笑い)

OS これを狙って撮る写真じゃないだよ。たまたまこれが写るだよ。これの前後して、絵でも構図がうんと問題だだよ。絵の全体のバランスが。このバランスが出るってのは一枚だよ。3センチずれたって違うだよ。ぜんぜん、構図が。これがベストなバランスってのが偶然できるだ。だから連射するだよ。

瀧澤英雄 これがベストだなんて、分からねえよ。もっとこういうふうに撮ったらいい、って。

OS もちろん、角度によってはいろんな表現の仕方があるけど、風景の写真の難しさってのはうんとあるだ。風景の写真がたくさん飾ってあるけど、これ、みんないい写真だけどさ、いいなあ、って思うのがこれだけある、ってのは珍しいで。殆どは風景の写真、って意味ねえで。何を言いてえんだ、これ、って。(笑い)絶対そうだって。俺もさんざん撮ったから。冬のこの辺、うんと撮ったよ。でも、気に入ったのなんか、幾枚もない。だから偶然が生み出す技術なんだよ。

司会 これで何が言いたい、って考えるものなんですか。

瀧澤英雄 何が言いたい、って。

司会 こういうことを表したい、とか。これなんか、まさに家族のこういうのを感じるんですけど。そういう思いもあるのかなと。撮る時に。

瀧澤英雄 この場合はどうなのかな。それこそ今の、仲良し、ああ、仲良く歩いているな、って。だから夕陽が来た時にショットで収められるかな、と。そんなようなことだな。

あ、片付けるのはあとでやるからいいよ。せっかくだから見てもらって。ご批判ください。

あ、これが最初に。

司会 すごいですよ。文部大臣賞ですか。

瀧澤英雄 これでカメラ貰って、67(ロクナナ・ブローニーフィルムを使う中判カメラ・画面サイズが6センチ×7センチ)のカメラで撮った。

司会 これはもう、家の傍から撮ったんですか?

瀧澤英雄 すぐ前。竹薮があって、竹薮の向こう。

OS これは良いわ。

TY これは浅間でしょう。

OS これはね、写真撮ってる人はテーマを設けて撮ってる訳じゃねえだよ。撮って出来た写真にテーマがついちゃうだよ。(笑い)イメージが。それでいいだよ。絵っていうのはそういうもんだ。だって、夕陽かなんかが当たって鮮やかに出ているタイミングはこの時しかないだよ。これが少しずれても駄目だ。遠近感が出てて、重量感が出て画面の中でどうバランスがとれてるかを見て、いいな、これ、って感じるだよ。心に訴えかけることを始めから狙うなんて、絶対出来ねえだ。偶然が生み出したこれ。

瀧澤英雄 みんなそうだよ。だって、浅間は真っ白になっててさ、柿があるわけないじゃないか。

司会 この時はふと、これを撮ろうと思ったんですか。瞬間的に思ったんですか。

瀧澤英雄 これはね、いつもこの柿は撮ってたんですよ。

司会 写真を。

瀧澤英雄 うん、うん。それで畑に行ったら浅間が真っ白だった。なんか面白い写真になるかと思って撮り始めて、そしたらたまたまそこに、なんだ、祠もあるし、あと、これが面白かったんだよ、これが。手かけた跡が。豆かも知れない。

OS これのポイントって、柿の黄色だよな。柿の色。これ、陽が当たってなけりゃ、もっと沈んじゃう。

瀧澤英雄 何の価値もねえ。

OS 上下のバランスがとれてるよな。あの鮮やかさが重み出してるし。近くだって、あれがいいよね。これは狙って撮れるもんじゃないよ。

司会 たぶん、普段からこの光景をご覧になってて。

瀧澤英雄 構図は頭に入っていたからね。

司会 だから、ほかのシーズンも撮ってるんでしょうね。それでたまたま、っていうか、こういう。

TY でも、瀧澤さんが歩いてて、瀧澤さんの眼に映った、何て言うんだろう、感動っていうのが、ばっと画面に保存されて、今みんなの眼にも映って、瀧澤さんが感じたのと同じようなことをみなさんが今感じているんじゃないかと思うんですけど。

瀧澤英雄 感じるかどうかは分からないけどね。

TY 感じるでしょう。

OS そうだよ。プロの写真家だから。ファインダーを覗いた瞬間にこの構図が分かる。俺らは何十枚と撮らないとこれはいいわ、っていうのが出て来ないんだけど、プロはファインダーを覗いた瞬間に分かる。もうちょっと上がいいな、下がいいかな、なんて。

瀧澤英雄 ある、ある。デジカメみたいにさ、100枚も撮らないけど、5枚や6枚撮るよ。勘定しながら撮る。これ6×7だとさ、8枚から10枚くらいしか撮れないんだよ。6×45だと15、6枚撮れるけど。

一同 ふーん。

司会 これはやっぱりその、現像されて来た時に、あ、自分の思った通りのものが出来た、これだ、って思いがあるんですか。

瀧澤英雄 あるね。

TY じゃあ、そのつもりで撮ったのに、あまり自分の思った通りじゃなかった、というのも?

瀧澤英雄 あるある、そっちの方が多いわ。圧倒的に多いわ。(笑い)

TY そうですか。でも、この柿の色は本当に赤いですものね。

瀧澤英雄 何しろ現像してみないと分からないからなあ。デジカメならさ、そこで見られるじゃないですか。それで、ホワイトバランスをどうするとかさ、そういうふうにやったら、どんな写真にでもなるけどさ。フィルムはどうしようもないもんね。

司会 そうですね。

瀧澤英雄 あれ、オーバーして真っ白だ、なんてさ。

司会 文部科学大臣賞、ってこれは出展したわけですよね。

瀧澤英雄 これはそう。

TY やっぱりみんなに見て欲しい、っていうの、ありますよね。自分の見ている景色がこんなにすごい、って。

司会 いろんな審査があって、賞になるんですよね。

瀧澤英雄 審査員が来たよ。

司会 現場まで、ですか?

瀧澤英雄 どんな場所ですか、って。来た時はこんな、景色じゃないだから。(笑い)

司会 だって、なかなか文部科学大臣賞、って出ない賞ですよね。

瀧澤英雄 一回に1枚しか出せないから。その代わり、毎年あるだよ。

TY だって、何人出されるんですか。

瀧澤英雄 出したってそうはいかないわな。

司会 これはやっぱり、普段の風景。これを切り取っているというのが、瀧澤さんの八重原に対する、自分の暮らしている所に対する思いとか、そういうのがあるのかな。

瀧澤英雄 そういう思いなのか、他に撮りに行けないから地元で撮ってるのか。

司会 やっぱり生まれてここで暮らして来たっていう、なにか残したい思いみたいなものがあるんじゃないですか、写真に。

瀧澤英雄 そんなとこまでは考えてないよな。(新しい写真を出して、一同で見る)

それは令和元年の初日の出、じゃなかったんだよ。5月1日、じゃなくて、5月2日。

TY (変った模様を見つけて)これはなんですか。

瀧澤英雄 これは、フィルターにこういうのをつけてね、令和2日目。(笑い)

司会 これはどこから撮られたんですか?

瀧澤英雄 これはそこの田圃。うちの傍の田圃。

司会 この日は令和の最初の日の朝陽を撮りたいと思われたんですか。

瀧澤英雄 うん、だけど、一日は駄目だったね。

司会 だけどね、2日であっても朝陽としては初めての。

瀧澤英雄 ごめん、朝陽じゃなくて、夕陽。これは夕陽。朝陽はここにあった。

TY でも、説明を聞くと令和、という感じがしますよね。

瀧澤英雄 これは令和を撮ろうと思って。

TY そういう思いを込めて撮られたんですね。

瀧澤英雄 だから、朝陽もある。今日は持って来なかったんだけど。あ、どっかにあるかな。紙袋の中にあったかな。

司会 せっかくだから、見せて頂きたいな。

瀧澤英雄 (持って来た荷物を一つずつ見ていく)あった。これだ。いや、これは違う。持って来てないや。

TY でも、すごい写真ばかりですよね。

OS どれもいいなあ。これなんか、浅間山がいいねえ。

瀧澤英雄 (先ほどの写真とは違う時に撮った写真を見つけて)これは同じ所だよ。すいません。持って来てなかった。この箱の中は蛙ちゃん。(雪の残る花の上にいる蛙の写真を出して)これはたまたま、これが面白かったから。

TY これは、こう、見るんですか?

瀧澤英雄 そう。これだって、あれだよ。梅じゃない。

OS 雪かい?

TY これは?

瀧澤英雄 だから、(雪が)垂れて来てるんだよ。茎があって、茎から下へもうちょっと垂れる。

OS これはなんなんだい?

瀧澤英雄 梅じゃない、地梨じゃなくて、木瓜(ぼけ)。木瓜の花。だから、これだってあれだよ、同じだよ。それでもあれよりは。

OS いいタイミングだ。

瀧澤英雄 これも家の横にあったから。

荻原慎一郎 異常な気象を見ることがあるだけど、写真を撮ろうという気にならないだ。(笑い)十五分もしたら、なくなっちゃうんだから。

司会 その時しかないですものね。

OS それがセンスがあるなしの違いだわ。

TY 瀧澤さんしか撮れない写真ですよね。

司会 いやあ、すごいわ。

TY これは鶏頭(ケイトウ)ですか?

瀧澤英雄 そう、鶏頭の上にいた。

司会 鶏頭を栽培されているっておっしゃいましたっけ?

瀧澤英雄 いや、今はやってない。まあ、こんなもんです。あ、それは夕陽かなんかです。

いいよ、見て。

TY これはいつの空ですか。

瀧澤英雄 つい最近。これじゃなくて、真っ赤っ赤のやつがあったんだけど。

TY 夕陽ですか。

瀧澤英雄 そう、夕陽です。

TY これも同じですか?

瀧澤英雄 それは、ちょっと違う。

TY じゃあ、いつでも山とか空とか雲とか。

OS 見てる。毎日見てる。

瀧澤英雄 毎日見てるな。明日天気かな、とか。そっちだよな、先は。(笑い)

TY でも空は本当にスクリーンですよね。

瀧澤英雄 そう、スクリーン。だから、これ、ほとんど同じ場所から撮ってる。

司会 そうかあ。

瀧澤英雄 だいたい似たような場所から撮ってる。

TY でも、日々違いますね。

司会 これとか、面白いですよね。

瀧澤英雄 これは秋かな。これは朝陽じゃなくて夕陽だよ。あ、これは朝陽か。浅間から上がるところだ。

TY 朝陽をこういうふうに撮る、っていうことは何時くらいから起きていらっしゃるんですか?見てらっしゃるんですか?(笑い)

瀧澤英雄 百姓は早いんだよ。今、モロコシの人なんか、これやって穫ってるんだから。暗いうちに行くよ。あれは雨降っても何しても穫らなくちゃならないんだから。

TY プロ根性だよ。自分だったら絶対嫌だ。(笑い)

TM この天気だと、天気がこれから変るとか、そういう眼で見ていらっしゃいますか。

瀧澤英雄 夕陽は見てる。

TY 明日の天気が分かりますか。

瀧澤英雄 100パーセントは分かんないんだよな。これは降るかなってくらいなもんでな。

TM でも、ここら辺の言い伝えみたいなもんがあるんじゃないですか。

瀧澤英雄 ある、ある。朝焼けは降るっていうね。だからこの日は、次の日、降ったかも分かんないよ。

TY こういうの、って、クジラ雲とか言いますか。

瀧澤英雄 何て言うんだろうな。

司会 先ほどのお話しにね、十五年前に撮られた写真集の、その時にやったことが、写真を撮られるようになったという。

瀧澤英雄 橘さんのお陰だよ。

司会 その時に人物写真も撮ったんですか。

TM あの時はね、村の方々の笑顔のを撮ろうという、そういうテーマだったんです。瀧澤さんと私と、お亡くなりになった赤尾武彦さん、それから山浦和枝さん、美容室の。女の方はね、写真を撮らして,って言うと、「頭が」って言うでしょ。で、山浦さんの美容室でね、もう出来上がった頭でね、「ちょっと今、こんなことやってるんだけど」と言うと、もう出来上がってるもんだから。

瀧澤英雄 安心して撮るわね。

TM そう、山浦さんが、たくさん撮ってくれてね。ピッカピカのいい写真をね。

司会 それじゃ、それは皆さんが分担をしたんですか。

瀧澤英雄 ある程度、分担だね。あと中学生とかさ、保育園とか。運動会とかね。そんなとこに皆が行って。

TM 村民運動会が、ふれあい体育館であって、綱引きなんかも撮りましたね。

司会 それはこの地域の日常の様子を撮っていこうという、

TM 日常というよりは、私は村の方々のいい顔を撮りたいなという、そういうことでしたね。

瀧澤英雄 だから、どこへ行っても顔が主体で、笑顔を撮る。

司会 一人一人の。

瀧澤英雄 そうそう。

TM いきなり行ってもね、「笑って」って言ったって、「なんで笑わなきゃいけないの」みたいなね。それがあるもんだから。

司会 なかなか笑ってる写真を撮るのは難しい。

TM 瀧澤さんはね、もう全部知り合いだから。

瀧澤英雄 「嫌だ」って言う人はいなかったよ。

司会 ああ、瀧澤さんが行けば、自然に話が弾んで、いい顔になってくんですね。

TY 猫も笑うくらいなんですから。

司会 その時は写真が結構面白いと。

瀧澤英雄 相手がね、笑顔になって撮らしてくれるってことは、気が通じたということで。

司会 そう、気が通じたってことですよね。で、風景は。人物はその時だけで。

瀧澤英雄 その時だけだね。今でも農業やってる人の作業風景は撮ってるけど、個人的に笑顔、っていうのはもう撮らなくなっちゃったね。

司会 じゃあ、農業をやってる農家さんの姿とかを撮って。

瀧澤英雄 JA佐久の年に一度の写真展に応募するんだけど、駄目だね。あのさ、あそこは誰が審査しているんだかわからない。だから「審査員の名前くらい入れろよ」って言ってるんだよ。審査する人の責任があるよな。

司会 名前が出てないんですね。

瀧澤英雄 だから、地元のカメラ屋さんかなんかの、そういうのがなっちゃうんだよな。

名前を入れてくれないから。

司会 やっぱり写真を見ていると、瀧澤さんがこの地域で愛情を持って写真を撮ってるんだなって感じるんですよね。

瀧澤英雄 愛情なんてとこまでは行かないですね。

司会 そうですか。

TY ここでの暮らし、生きてることを、すごく大事に楽しんでるというか。

瀧澤英雄 まあ、楽しんでるね。だから百姓をやっても「趣味の園芸」って言ってるんだよ。

司会 百姓が、ですか。農業って、荻原さんもそうですけど、観察じゃないですか。たぶん、作物とかの。

瀧澤英雄 毎年一年生だよ。

司会 その意味では写真もね、やっぱり観察眼があるとか、そういう共通した訓練があるんじゃないですか。

瀧澤英雄 それはあるかも知れない。そこまで深く考えたことはないけれども。

OS 風景を撮る写真と、人物を撮る写真とは、全然違う。

瀧澤英雄 それは違う。

OS さっきの笑顔を撮ったり、人の顔を撮ったりしてる、テレビの報道なんかでは東京あたりのラッシュの風景だとか、人の通勤してる姿だとか、公園で遊んでる姿だとか、人をいっぱい撮るでしょ。でも、あの中にドラマを残すだよ。素人が撮るとね、ただ人を撮ってるだけだ。第三者が見て、意味がない。さっき言った、農協のJAでやってる展覧会なんかはさ、バックに農業があるんだよ。だから人を撮るといっても「この人は何をやってるの」ってみんなが見るだ。何もしてないのを見ても全然つまらない。「稲刈りをしてるんだな」とか、「芋掘りをしてるな」とか、「モロコシ穫ってるな」とか、分かる分かる、って。

瀧澤英雄 やっぱり物語がないとな。

OS そう、そう。人を撮る、っていうのは、うんと難しい。で、うんとつまらない。人の顔って、見たって、写ってる人にとっては価値があるけど、第三者が見れば意味がない。他人の顔なんて、面白くも何ともない。人に面白いと思って貰うには、どういう思いが出ているか、何をしてる人か、どういう場面だったのかというのが、出て来なきゃいけない。そうすると人が生きるんだ。絵のような写真なんて、全然つまらない。これにはドラマがあるだよ、絶対に。だから、いいなあ、と思うだよ。これはプロでもアマでも感じるのは同じ。

瀧澤英雄 プロの人はもっといい写真を撮るわい。

司会 確かにね、この写真を見て、この裏にあるものというのかな。例えばこの桜の、歩いたらどんな気持ちなんだろう、とかね。どんなふうにこの日は、どんな一日だったのかね、とか。どんな人が歩いているんだろう、とかね。いろんなことを考えますよね。

瀧澤英雄 それで、感じてみて頂ければいいだけれども。

TM 瀧澤さんはですね、いちばん右の方の、氷柱があるような、そういう細かいところにね、瀧澤さんが「あ、いいな」というものを見つける才能があるんですよね。そういう小さな中にも実は、大きな宇宙があるみたいな。そういう眼を、見つける眼を瀧澤さんは持ってるんですよね。

TY やっぱり風とか、温度とか、そういうものがありますものね。一つ一つにね。

瀧澤英雄 それはそれぞれ、違うね。

司会 さっきの木瓜の花から滴り落ちる静けさとかね。やっぱり小さい中の宇宙というか、表現されていると。

瀧澤英雄 そんなに大げさなものじゃないよ。

TY でも、ほんの一瞬ですよね。普通だったら、ポトッで終わっちゃいますよね。

司会 僕なんか本当に、見過ごしちゃう世界ですね。

司会 やっぱり、そういうの、ありますよね。

TY でも、こういうのを撮る男の人、って珍しいんじゃありませんか。

瀧澤英雄 そうかい。(笑い)

TY 花があって、その一瞬、とか、雪と桜とか、鳥が飛び立つとか。

瀧澤英雄 鳥を撮る人は結構いるよね。ああいう人はやっぱり、根気が良くなきゃ駄目だね。2時間でも3時間でも待ってる。

司会 これなんかも、しばらく待ってる訳ですか。

瀧澤英雄 いえいえ、一瞬だよ。

TY えー、そうなんですか。

司会 えー、カメラ持っててパシッて撮ってきただけなんですか。

瀧澤英雄 ただ、垂れてくるのは待ちますよ。

司会 それは垂れてくるという現象が分かってて、それを見たいと。

瀧澤英雄 そう、分かってるから。ちょっと経てば垂れてくる、って。

司会 その時って、こういうふうな絵になるんじゃないか、っていうイメージがあるんじゃないですか。

瀧澤英雄 うーん、難しいね。だからこれなんか、この白なんていらないと思うんだよね。

雪の部分をね。

TY えー、これがなかったら。

瀧澤英雄 ぜんぜんなきゃ駄目だけど、眼が雪の方へ行っちゃうじゃないですか。

TY でも、これがあるから、こっちにも眼が行くんじゃないですか。

司会 うん、そう。

瀧澤英雄 このくらいで、もうちょっと下があった方がいい、って気がするんですよね。

OS うん、正解。

TY ちょっと似た感性を持ってらっしゃる。でも、私なんかはこういうふうに包まれてるから、この冷たさとか。

小林麻美 そう、じわー、っとね。感じますよね。

瀧澤英雄 ただ、そっちの方へ眼が行っちゃう、って言われる。私の撮りたかったのはこっちだったもんだから。

TY でも、ここだけ撮ったって、ねえ。

瀧澤英雄 そうそう、だから入れとかないとね。そこが難しいところで。

TM このバックにね、グリーンがあるでしょ。

瀧澤英雄 後ろは葉っぱだと思うんだよね。

TM すごいね、こういうの。

司会 後ろが違う色だったら、ぜんぜん雰囲気が違いますよね。

TY なんか、蛙に後光が射してるみたいで。

小林麻美 この赤いのは何なんでしょう。

瀧澤英雄 鶏頭。鶏頭の上に乗って。

TY こういう色の花の上に緑の蛙がいるなん。

司会 この距離が分かって撮ってるわけですか。

瀧澤英雄 結果的、結果的にだよ。

司会 これ、絶妙だと思うんですよね。

瀧澤英雄 これがデジカメである訳ないんだよ。

OS これ、レンズじゃないと見えないか知れねえ。

瀧澤英雄 そう、見えないか知んねえ。

OS フィルムが反応した緑だから。

司会 この緑がこっちにあったら、ぜんぜん面白くないんじゃないですか。蛙がいて、その後ろにこういう緑があって、という。

TY なんか、後光が射してますよね。

OS センスだ、センス。

司会 これは本当に狙ったんじゃないかと思いますけれどもね。すごいですね。これはどこかで賞を取ったんじゃないですか。

瀧澤英雄 これは出してない。

司会 ふーん、これは素敵な写真だなあ。

瀧澤英雄 この木瓜がいるのか、いらないのか。

OS そうだね。なくてもいいのかも知れない。こういうふうにね。

瀧澤英雄 でも、真ん中でない方がいい。

OS このウサギ、じゃない蛙のいる所が狭くなる。ここだと広くなる。

司会 やっぱり、ここの空間は欲しいですよね。

瀧澤英雄 真ん中じゃ意味がないからね。

司会 位置とすれば良いトリミングされてますよね。瀧澤さんの写真を今回じっくり見させてもらえたのは本当に良かったなと思います。

OS あんたも写真をやればいいだよ。ちょっと高いけど、趣味としてはいいよ。

司会 失礼な話ですけど、これが50年後とか、100年後とかに、みなさん亡くなって、僕も亡くなっていくんだけど、その後に写真が残ってて、その時に見た方が、こういう風景があったのか、とか、こういうふうな日常があったのか、って、とてもいい記録だと思いますよね。さっき荻原さんがおっしゃってましたけど、土地の造成、改良、その前の映像は頭の中にはあるんでしょうけれども。

OS もう、伝えられないものな。書類や記録ではあるけど。家の田圃がこれだだよ。おれはここでドジョウを捕っただい、ていう話は出来ねえだわい。記憶にはあるけど。だから、撮っておくべきだね。

司会 やっぱりこういうものはね、ちゃんと記録として残されていれば、たぶん、伝わっていくものもあるんじゃないかな、と思いますよね。

TY 本当に今、何でもなく見ているものが、移り変わっていっちゃうんですよね。

OS 素人が面白いから、って同じアングルで撮ってみ、こんなの撮れない。ぜんぜん、違う。なんだこれ、ってなっちゃう。

瀧澤英雄 もっと巧く撮れるよ。

司会 こういうものはその時しか撮れないじゃないですか。

瀧澤英雄 それは言える。ワンチャンスだからね。

司会 これからまた、こういう写真を撮っていきたいとか、あるんですか。

瀧澤英雄 自然相手だから。

TY 日常の中で息をするように、はっと思った時に撮っていくんですか。

瀧澤英雄 その方が多いね、私は。

TY それは、瀧澤さんの生きる形そのものですよね。

瀧澤英雄 だから、日常の一瞬を切り取りたいということになるね。ほかの皆さんはこういう写真を撮りにいくとか、目的があって出るじゃないですか。

TY だけど、ここの場所というか、空間、世界を瀧澤さんはやっぱり自分のものとして呼吸しているみたいな気がしますよね。一体化しているというか。他のところへ行かなくても、ここで、これほど美しい世界があるんだったら、なにもわざわざ他所へ行かなくても。

瀧澤英雄 それが負け惜しみなんだよ。他に撮りに行かれないからなんだよ。

司会 そこでこんな素晴らしい写真を撮られている。

瀧澤英雄 まあ、ここにいなきゃ、こんな写真は撮れないわな。たまたまこうやって見たらさ、飛行機雲がピャーッていってさ。

司会 たぶん、写真ね、例えばここに住んでいない人が撮ったら全然別の写真になっちゃうんじゃないかな。

TY 撮れないでしょう。

司会 ここに住んでいる人だからこそ、撮れるもの、ってあるんじゃないかなと思いますね。世の中いろんなプロのカメラマンがいて、風景写真を撮りに行こうとするじゃないですか。だけど、この人はここの風景写真を撮りに来ただけなんだなっていう写真と、やっぱりそこに暮らしがあって、撮っている、っていう人の写真というのは、たぶん違うと思うし。でも人物の写真をプロジェクトで撮られたじゃないですか。誰か雇われたカメラマンが撮ったって、笑顔なんて出ない可能性は十分ある。瀧澤さんがそこにいるから、その笑顔が撮れる。

瀧澤英雄 そういうことはあったかも分からない。

司会 もちろん、写真の技術は高い。プロとして子供の写真をパシャって撮ったって。でも物語が見えない写真というか。

TY やっぱりその人が全部出ちゃうと思う。

司会 ただ、瀧澤さんとその風景の関わりだと思うし、瀧澤さんとその被写体の人物の関わりみたいなのが、すごくやっぱり表れていると。瀧澤さんでしか撮れない写真。そういうことだと思う。

TY これまでもずいぶんたくさん写真が積み重なっていると思いますけれども、これから先どれくらい撮れるか、楽しみですよね。

瀧澤英雄 苦しむか。(笑い)これからが一番、撮り辛いんだよな。朝陽かさ、夕暮れか、それしかない。

TY ドラマチックという意味では陽が沈んだり、昇ったりというのはすごいでしょうけど、でも。

瀧澤英雄 雨上がりとかな。

小林麻美 基本的には人物はあまり?

瀧澤英雄 あんまり撮らない。

OS 人物は難しい。

瀧澤英雄 これは家の方から撮った雪景色。

TY だから、みんな雪は見てるんだけど、これをこのように撮れるというのは、やっぱり人を選びますよね。こういうふうに見る人も少ないし、ただ、「ああ、雪が積もってる」で終わっちゃうでしょ。

瀧澤英雄 ちょっと光が当たってたんでしょ。

TY これを見て、撮りたいと思った気持ちは良く分かるような気がします。

小林麻美 溶けて落ちてるのが風で。

瀧澤英雄 氷柱になってる。氷柱もあるし、舞ってもいるし、降ってもいるだ。

OS そうだな。

瀧澤英雄 降ってもいるし、氷柱もあるし。

TY やっぱり厳しい寒さにはそれなりの美しさがあるんですよね。

瀧澤英雄 それで後ろが暗かったから、目立って出て来ちゃってね。

TY でも、これが撮れた時にはすごく嬉しかったんじゃないですか。

瀧澤英雄 うん、おうおう、ってな。なからに撮れてたもんな。

TY 白黒だから色は地味だけど、すごい写真ですよね。

司会 写真で一瞬、撮りたい方でも、続かない、って方が、僕もそうなんですけど、(笑い)続けてる、っていうのがすごいなと思いますよね。何なんですかね。たぶん世の中でカメラを買う人っていると思うんですけど、撮りたいなと思って。だけど、止めちゃうっていう人が多いんじゃないかと思うんですけどね。

瀧澤英雄 カメラ買う人って目的がなんか違うかも知れない。私は此処の近辺の自然でいいからさ。だけど、全国あっちこっち行く人たちは、そこの場所の有名な場所を撮りたいんだよ。だからつまんないんだよね。(笑い)

司会 だけど僕が感動して写真を撮ろうと思っても、そんなに長続きしないんじゃないかな。

小林麻美 結局自分が思ったように撮れないから、感動した風景をそのまま撮りたいんだけど、撮った写真を見て、えっ、こんなんだったっけ、って思っちゃう。

OS だいたいそれで止しちゃう。

瀧澤英雄 誰だって、その方が多いよ。諦めないだけだよ。

司会 お持ちのご性格なのか、

TY でも、18の時から、って強いと思うなあ。

司会 そうですね。もう50年、撮って来ているんですものね。

瀧澤英雄 昔なんて、こういうふうに撮ろうなんて全然思ってなかった。ただ山へ登ってって、気持ちいいよね。それを写真に収めるだけだもの、だったんだよ、前は。今はどっちかというと、こういうふうに撮ってみるかな、とかあるけれども。これは上八重原のクルミの木。

OS こんなふうに見えるのか。これは朝、それとも夕方。

瀧澤英雄 全部、夕方だわ。

小林麻美 2月下旬、4時頃。

OS 書いてあるのか。これは道の方から見てるのか。

TY で、逆光なんですね。

瀧澤英雄 俺はこの写真はいっぱい撮った。ここにはないけど。だけどここんとこ、杭を打っちゃって。

OS しょうがないもんだなあ。(笑い)

瀧澤英雄 邪魔だから取れ、って訳にいかないもんな。

TY じゃあ、外して撮って、また元に戻しておくとか。(笑い)

瀧澤英雄 だからそれが入らないようにさ、木の間に入れるとかさ。

小林麻美 これで四季を撮ったら面白そう。

TM 私これ、同じアングルで、毎月毎月撮ったんです。12ヶ月。こんなのがだんだん葉っぱが出て、すごく繁って、という、そういう写真をね、同じアングルで撮りました。

小林麻美 胡桃の花って私はこっちに来て初めて見て、ああ、こんなものなんだ、って思ったんですけど、結構知らないものですよね。私はここに暮らすようになって、日常の農作業の風景とかね、稲刈りしている風景だとか、畑で燃やして煙がたなびいている風景だとか、人が暮らしてきた日常の風景の美しさというのがすごくあるなあと思って。撮りたいと思っても、うまく撮れないかもしれないなあと。

瀧澤英雄 いや、いいのが撮れるかしんねえ。うちらが撮ってるのはもうそう思っちゃってるから。

OS そういうものを美しいと思う感性が、尊いだよ。(笑い)俺らはまったく煙り出しやがって邪魔だ、とか、なにも風情も何もないわ。それが、ああ、いいなあ、人が生活している。そういう感性が大事よ。

瀧澤英雄 それは言えるよ。本当は稲刈りも機械でだーっとやっちゃうのがいいんでしょうけど、年によっては台風で倒れちゃって、皆で手刈りしてたりするじゃない。そういうの見ると、ああいいなあって。私が労働してないから。

OS よくあんなことしてるな、って俺なんか通り過ぎちゃう。それを素晴らしいと思うか。それが感性だ。そんなものを持ってるのがすごいじゃない。

瀧澤英雄 朝から撮って。

TY 駄目だよ、だって麻美さんは徹夜でパンを焼いてるんだから。

瀧澤英雄 じゃあ、徹夜でパンを焼いて、明け方帰る時。

司会 いや、瀧澤さんの世界観が感じられて楽しかったです。では一言ずつ感想を。僕から言うと、やっぱり日常の一瞬を切り取りたいという言葉が良かったなあと思って。本当にここに暮らしている人だからなんだな、というか。それが瀧澤さんにしか撮れない写真を撮られていると。当たり前なんですけど。そういうのを感じて、そういうことを聞けたのが嬉しかったです。ありがとうございました。

小林麻美 私も同じですね。有名な所に行くとか、どこにいくというのではなく、人の暮らしの中で、日常のなかでぱっと見たものを撮りたいと思って撮られている。それが瀧澤さんならではの写真なのかなと。素晴らしいと思います。

瀧澤英雄 他に撮りに行かれないだけです。

TY ここの、外から来たらここの場所は、本当にちょっと他にはない美しさがあって、その、ここの土地が瀧澤さんを呼んでるというのか、いつでも囁きかけて「撮って、撮って」と言ってるような気がして。

司会 確かにそうかもね。

瀧澤英雄 ぜんぜんそんなふうには思わないけどな。

OS 思わねえけど、声がするだよ。(笑い)皆さんが言われた通りだと思うし、何よりもこういうものを美しいと感じて撮りたいと思う気持ちがすごい。見たら俺も美しいと思うよ。でも、これに眼をとめて撮りたいという意志がない。写真家でピリッツァー賞を取ったな、戦場カメラマンなんかもいるけれども、そういうのを見ればすげえな、プロは、って思うだけど、それでもここに住んでる我々から見ると、「こういうとこがあるよな」という小さな感動がいっぱいあるじゃない。これはやっぱり出来なきゃ駄目だ。若い人にも伝えらえたらいいと思うよ。

司会 ありがとうございました。

TM 私は絵画館で絵の撮影を主にやってますんで、そういう意味ではものをじっくり見るというそういう、作品をちゃんと撮るという思いで撮ってるんですね。それは作家が一生懸命描いた、という気持ちを感じて、それを写真というものを通して印刷になってそれが皆に見られる。そうするとそれは「良い写真だね」ではなくて、「良い絵だね」と思ってもらえるように、そういう内容を伝えたい、というのが私の意味だったんです。笑顔の写真というのも確かにこの方々が生きている。苦労したけれども良い笑顔を見せてくれたという、そういう感じの写真を撮った訳ですね。そういうことを一緒にやった瀧澤さんが、そういうことを体験して、やっぱり私はこの土地の、この景色の、この瞬間を撮りたいという気持ちになったのではないかと、私は瀧澤さんのとこをすごく素晴らしいと評価してます。

瀧澤英雄 ありがとうございます。皆さんのお褒めの言葉を頂いただけども、写真、撮れなくなっちゃったね。難しくなっちゃって。(笑い)馬鹿な写真、撮れなくなっちゃって。

OS これだけの写真が撮れる人っていうのは俺、自己満足でいいんじゃないかと思うんだけど。普通の自己満足じゃここまで行かないから。

司会 最後は自分の中で納得出来るかどうかですね。

TY みなさんこれ、集大成というか、かなりな分量の、村の一瞬の、そういうものを一堂に展示して、見て頂けたら本当に皆さんも喜ぶんじゃないでしょうか。

司会 機会がね、どっかに。

瀧澤英雄 今、もうサロンに出てるからね。

TY 素晴らしいと思います。もっと並べてもいいんじゃないでしょうか。

瀧澤英雄 あそこは小さいよね。2、30枚しか並ばないか知れない。

OS そうかって、こんなもん100枚も並べたら見ねえ、って。(笑い)目移りしちゃって。だから、なにかのシリーズで。

司会 いいこと言うなあ。

瀧澤英雄 結構、今は応募している人もいっぱいいて、だんだん、空いてなくなって来てるけど。俺、一番最初にやらしてもらったんだよ。坂田さんに写真集を見せてやったら、「一番最初に瀧澤さん、使って」って。

TY それで皆が「あ、瀧澤さんの写真だ」って。素晴らしかったです。

瀧澤英雄 お陰さまで。

司会 本当に今日は有り難うございました。

目次
閉じる